ベントレー・システムズ(本社・米国)の日本法人(法人名同じ、東京都豊島区)を「リージョナルディレクター」として率いるアナトリー・アスト氏。日本の古典文学を専攻し、源氏物語を英文と日本文で論じた学生時代から、インフラの3次元モデルなどを扱う現在までの歩みを、日本語でインタビューしている。
――コロンビア大学の大学院で日本の古典文学の博士号を取ろうとしたが、就職事情で仕事を探したと、前回の話だった。
「昭和の社長」の会社でソフト開発
アナトリー・アスト氏:コロンビア大学には当時、ドナルド・キーン氏(注1)が在職し、充実した研究生活を送れた。
就職活動では、5か国語の語学力(露・仏・英・日・中)を生かした。就職したのは、飲食業界向けのシステムをレストランに提供する日本企業。日本出張が多くあった。
社長からは「私は昭和の社長です」と挨拶された(笑い)。最初は意味が分からなかったが、飲み会文化や朝礼、残業などで理解できた(笑い)。
そこでソフト開発や戦略、PR、技術者との連携などに携わり、日本のビジネスカルチャーを学んだ。そのうちに出会って転職した先が、Cesium(注2)だ。
――なじみの薄い分野を、どう勉強したのか。
アナトリー:確かに、Cesiumの複雑なモデリング技術は当初、不明な点があった。でも趣味でゲームをしていたので、そのエンジンは理解できた。
Cesium 自然環境背景に3D
――何の会社か。
アナトリー:構造物と地理空間データ(自然環境を)3Dモデルで結ぶオープンプラットフォームの運営会社だ。
例えば橋梁モデルはデータ量が非常に重く、扱いに困っている人が多い。それをCesiumは独自のファイル形式に変換し、自然環境を背景に3Dで可視化できる。
しかも、関係者と情報共有したい場合、相手が同じソフトでないと可視化できないケースが多いが、セジウムではリンクだけを共有すれば誰でも見られる。
買収
――ベントレー・システムズとの縁は?
アナトリー:私はCesiumでCOOを務めていたが、2024年、ベントレー・システムズに買収された。ベントレー・システムズはインフラの3次元モデルを扱っているが、地理空間データと結び、自然環境の中で可視化することはそれまでできなかった。
注1 1922~2019。日本人以上に日本・日本文学を知り、その魅力を発信。東日本大震災後に日本への帰化を表明した(東京の世田谷文学館が今年3月8日まで開いた「開館30周年記念「ドナルド・キーン展」の資料から)。
注2 大量の3D地理空間データをリアルタイムで高性能ストリーミングするソリューションを開発した。米国フィラデルフィアを拠点に、オープンソースと商用ソフトウェアを提供。日本では、700以上の官庁・大学・企業などが利用している。

