静岡市は、小河内大橋の老朽化に伴って、補修・補強工事を3か年かけて行い、このほど完了させた。同市は今夏、RC床版上面の補修を夜間のみ全面通行止めとし、翌朝には交通を再開させる条件下で、急速施工を行った。
この施工を可能にしたのは、①断面修復材に超速硬コンクリート(注1)を使った②現場での材料練り混ぜと運搬に自走式バケットモバイルミキサ(注2)2台を投入した―ことが大きい。
バケットモバイルミキサ2台投入 現場で材料練混ぜ 自走で運搬
同橋は大井川に架かる橋長80m、幅員4.5mの単径間鋼下路式ランガー桁橋(RC床版、2主桁)で、1968年(昭和43年)の架設から57年が過ぎている。
市建設局道路部の葵北道路整備課によると、「同橋は市道井川雨畑線に位置する山間部の一本道で、地域にとって重要な生活道路。工事にあたっては、住民から昼間の通行止めは困るとの声が寄せられていた」という。
バケットモバイルミキサは長さ3400mm×幅1700mmの寸法で、モービル車やポンプ車が進入できない山奥や狭あい箇所、重量規制中の橋など、従来は人力での練り混ぜと運搬に限られていた現場で効果を発揮する。幅4.5mの橋面上でも360度旋回が可能で、1バッチあたり約0.20㎥の材料練りができ、バケット底面には排出口が設けられている。
材料は、バケットに結合材・細骨材・粗骨材をあらかじめ混入したフレキシブルコンテナバッグ(ベースパック)を投入後、混和液、セッター水を加えて短時間で練り混ぜて排出する。
日本モバイルコンクリート協会 「モービル車使えない橋など対応」
7月18日深夜から19日未明にかけて行った約4時間の施工では、計27回の練り混ぜと同橋まで約100mの運搬を同ミキサ2台で繰り返した。施工数量は合計約6.5㎥(幅4㎡、厚さ59~80㎜)に及び、いずれも昼間は交通を開放できた。
施工元請はピア東海(静岡市、末長政行社長)が担当。現場代理人の末長信行専務は「断面修復材の材料費はコスト高だが、床版の強度発現によって翌朝の交通開放を無事実現できた。また、バケットモバイルミキサを2台使用したことで、連続した作業が可能となり、施工時間と人員を削減できた」と話した。
バケットモバイルミキサの操作・施工は、川端工業(福井市、中村光宏社長)と、四国生コンクリート工業(徳島市、和仁孝成社長)グループの日昇商事(同、林郷之社長)の保有機で行った。
両社で作る「日本モバイルコンクリート協会」(会長=中村社長)は、「モービル車が使えない日本全国の橋梁工事や特殊材料の練り混ぜ、離島での施工にも柔軟に対応していく」としている。
1次下請は、床版上面補修を川端工業(福井市、中村光宏社長)と三公工業(富士市、佐野公一朗社長)、舗装工を中部ニチレキ工事・静岡支店(同、上長者智明支店長)などが担った。
注1 ショーボンドマテリアル(東京都中央区、荒井摂社長)の低弾性ラテックス改質超速硬コンクリート「CPJ-L」。打設後4時間で24N/㎟以上を発現する超速硬性を持つ。
注2 コンパクトトラックローダー+BMX450。国内の保有台数が6台に限られ、うち橋梁向けで活用される2台が川端工業と日昇商事の機械。
注3 コンクリート床版(舗装)の施工範囲は、全体308㎡のうち、傷んでいた107.7㎡をCPJ-L工法、比較的健全な210.3㎡をニチレキの複合段差修正遮水性舗装「スロメDN工法」を使った。
Rc-Ⅰ塗装系の素地調整 循環式ハイブリッドブラストシステム工法で 小河内大橋の補修・補強
なお、同市が昨年度までに行った同橋の耐震補強や塗替え工事は、石福建設(静岡市、望月克政社長)が担当した。
塗替え塗装は、ランガー桁(面積1937㎡)部に対し、Rc―Ⅰ塗装系の素地調整として「循環式ハイブリッドブラストシステム工法」を使い、高欄(同185㎡)にはRc―Ⅲ塗装系を用いた。床版下面の断面修復にはポリマーセメントモルタルを充填し、一部についてはケイ酸塩系表面含侵材で保護を施した。また、両端支点部では水平力分担構造を設置し、支承防せい、RC橋台の縁端拡幅などを行った。
吊足場 支点部にクイックデッキ 対策後にSKパネルで全面盛替え
ランガー橋・補剛桁下に設置する吊足場については、水平力分担構造など重量物を取り付ける当初のみ、端支点部から6・2m余りを日綜産業(東京都中央区、小野大社長)のクイックデッキで設置。重い部材の取り付けが完了した後に同足場を撤去し、その後は吊足場全面をアルインコ(大阪市、井上雄策会長/小林宣夫社長)のセーフティSKパネルに切り替えた。側面防護工には、熱収縮型養生シート「シュリンクフィルム」と防音パネルを併用した。
国内外の橋梁工事で、一部にクイックデッキを使用後、SKパネルに盛り替えることを当初計画段階から組み込んだ事例は、本紙調べで類例がない。
施工の1次下請は、塗替え・支承防せい・床版下面補修などをコウノ(静岡市、香野智章社長)、足場工を三鋼仮設(同、関根達馬社長)、シュリンクフィルム施工をProtection service(川崎市、津野健司社長)がそれぞれ行った。






















