
今夏の参院選に出馬を予定している見坂茂範氏(元国土交通省近畿地方整備局長)は、橋梁の専門家として知られる。これまで2回掲載した「国土政策けん引インタビュー(5月1日・15日号)の補遺として、「好きな橋」を聞いた。
――橋とのかかわりから。
見坂茂範氏 私は京都大学工学部で、故・山田善一教授の研究室に所属し、耐震工学と橋梁工学を学んだ。大学院でも耐震工学をテーマに研究しており、自らを“橋の専門家”と自認している(笑)。
――好きな橋を。
見坂氏 3橋挙げたい。まず、明石海峡大橋。私は兵庫県多可郡加美町(現・多可町)に生まれた。山間の町だが、兵庫といえば明石海峡大橋だ。国内橋梁技術の粋を集めた世界最大級の吊橋で、いつ見ても美しい。

――2橋目は。
見坂 2018年から約2年間、福岡県庁の県土整備部長として出向した。その際、山口県庁や下関市に向かう公務で何度も渡った関門橋が強く印象に残っている。特に、下関北九州道路の事業化に向けて、国による計画段階評価や環境アセスメントの実施を県庁職員と共に後方支援したことは、忘れがたい経験だ。

――最後は
見坂 滋賀県甲賀市信楽町に位置する「第一大戸(だいど)川橋梁」。国の重要文化財に指定されている。戦後間もない頃に建設した重厚なPC橋が、今もそのままの形で残っていることが素晴らしい。


(橋梁通信6月15日付掲載)
編集部注 信楽高原鐡道が大戸川を渡る地点(滋賀県甲賀市)に架かる。橋長30mの単径間ポストテンション方式プレストレストコンクリート(PC)4主桁橋。国鉄信楽線時代の1954年(昭和29年)9月に竣工した。
旧橋は支間10mの3連鋼橋だったが、1953年(昭和28年)の集中豪雨で流失。架替えに際し、当時として桁高を低く抑えられたこの形式が選ばれた。この橋は、本格的なPC橋第1号で、支間30mのPC橋は日本初の試みだった。設計は極東鋼弦コンクリート振興(仏人技師コバニコ氏)、施工は森本組とピー・エス・コンクリート(現ピーエス・コンストラクション)が担当。08年(平成20年)、PC橋初の国指定登録有形文化財に登録された。
なお、同橋が竣工するまでは、国産初のPC道路橋「長生橋」(橋長3・3m、52年竣工、プレテン)や同初のPC鉄道橋「大阪駅路線打上桁」(同4・9m、53年、ポステン)など十数例があるのみで、埼玉県の道路橋「赤城見橋」(ポステン)の橋長14・6mが最長だった。